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積ん読 その8 [読書不可侵条約系]

清沢 洌   『暗黒日記』(2004)岩波文庫

暗黒日記―1942‐1945

暗黒日記―1942‐1945

  • 作者: 清沢 洌
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/10/15
  • メディア: 文庫

ずっと以前から気になっていた本だった。以前にも一度手に取り、ぱらぱらと数ページ読んだことがあったはずだが、結局読まずじまいになっていた。今回ようやく読むことができた。この本は、ジャーナリスト・評論家の清沢洌が戦時下において記した日記(備忘録)である。全編を通じて清沢の多彩な交友関係には驚かされる。『東洋経済新報』への執筆、外交研究会などの勉強会を通じて、幅広い面々と交わっている。石橋湛山、柳田国男、長谷川如是閑、蝋山政道、正宗白鳥、鳩山一郎、岩波茂雄、安倍能成、三木清、幣原喜重郎などなど。知識人や政財界人のみならず、警察関係者、外交官などにも知己が多い。多彩な交友関係からもたらされる貴重な情報、たとえば政府内部の大臣や官僚の動き、戦時政策や敗戦前の和平工作の動向など、かなり正確な情報を得ていたようだ。もちろんそれだけでなく、本人のアメリカ滞在経験から来る確かな視野も特筆すべきだろう。

日記を読んでみると、言論の自由のない、まさしく暗黒のような社会情勢の中で、彼が保持し得た冷静で確かな観察眼に感嘆させられる。

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積ん読 その7 [読書不可侵条約系]

久米郁男『労働政治-戦後政治のなかの労働組合』(2005)中公新書

労働政治ー戦後政治のなかの労働組合

労働政治ー戦後政治のなかの労働組合

  • 作者: 久米 郁男
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2005/05/26
  • メディア: 新書

本書を簡単に要約してみる。労働組合は、経済合理性を追求することで労働者の利益さらには戦後日本の成長と安定に貢献したが、悲願である労働戦線の統一すなわち「連合」結成によってその方向性が変わり、労働政策をめぐる政治のあり方も変化してしまった。80年代行政改革に積極的だった民間労働組合が、彼ら主導の労働組合統一を成し遂げたにもかかわらず90年代以後は改革への積極性を失ったのはなぜか?という(久米氏お得意の)「パズルを解く」ことがテーマである。
第1章ではいわゆる利益集団論(多元主義論)による説明、第2章は政治経済と労働組合との関係、第3章は労働政策過程の考察であり、第4章は組合リーダーへのサーベイ調査、第5章以下は戦後労働組合の統一までの歴史、となっている。

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積ん読 その6 [読書不可侵条約系]

鈴木栄『特別養護老人ホーム』(2003)NHK出版

特別養護老人ホーム

特別養護老人ホーム

  • 作者: 鈴木 栄
  • 出版社/メーカー: 日本放送出版協会
  • 発売日: 2003/05
  • メディア: 単行本

本書は高齢者福祉施設の経営者という立場から、介護の現場を物語った本である。アルツハイマーや知的障害をもつ老人を受け入れる特別養護老人ホームが物語の舞台。小難しい制度や理論の話は出てこない(ただし3章では介護保険制度への批判がでてくるが)ので、気軽に読める。介護を必要とする老人達、そして介護に苦労する職員たちの奮闘・苦闘のエピソードがいろいろあって、介護のありかたについて考えさせてくれる。セクハラじいさん、「支店長」じいさん、遺産目当ての縁者とのやり取りなど、おもしろい。また、褥瘡をどう防ぐか、体力のある老人の排尿便をどう誘導するか、といった介護の現場の視点は、参考になる。

「老人施設職員の毎日の主な仕事は、食事と排泄と入浴の介助といっていいくらいである。・・・なかでも排泄介助の仕事が一番多いのだが、いくら仕事だからといっても、慣れればよいといっても、おむつを広げた時のあの「ぷーん」とくる臭気には、とても堪えられるものではない。・・・だからこそ、心ある者がこの仕事をすべきであり、心ある者が施設を管理しなければいけないのである。施設における排泄介助の仕事は、愛情と忍耐と会話と情熱がなければ、成り立たない」


という言葉に、福祉に情熱を傾ける著者の熱い思いが伝わってくる。


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積ん読 その5 [読書不可侵条約系]

保坂正康『あの戦争は何だったのか-大人のための歴史教科書』(2005)新潮新書

あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書

あの戦争は何だったのか―大人のための歴史教科書

  • 作者: 保阪 正康
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2005/07
  • メディア: 新書

本書は、まず旧日本軍のメカニズムの説明から始まり、二二六事件を出発点として太平洋戦争の緒戦の快進撃、泥沼化、そして敗戦へ至る道のりをえがきだす。

あの戦争を「侵略だった」とのみとらえる形骸化した反戦平和主義、その反動として現れた「自虐史観で語るな」と叫ぶ人々を、同じ感情論のコインの裏表にしか過ぎないと批判し、さらには「戦争を語り継ぐ」戦争体験者の声をも断片的なものであり戦争全体を知るものではないとバッサリ斬り捨てている姿勢は勇ましい。しかしながら、本書がこれまでのこうした様々な戦争を論ずる書に比べて、あの戦争の全体像をより深くとらえているのかどうかは疑問だ。

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積ん読 その4 [読書不可侵条約系]

山本七平『私のなかの日本軍』

私の中の日本軍

私の中の日本軍

  • 作者: 山本 七平
  • 出版社/メーカー: 文芸春秋
  • 発売日: 1997/04
  • メディア: 単行本

この本は、戦時中に戦意高揚記事として書かれたはずの「百人斬り」記事が、事実として受け止められてしまっていることに深い憂慮を抱き、戦争が終わった今では明確にわからなくなっている当時の戦場の常識、軍隊生活、兵士の心理などの点を注意深く考察しながら、それが決して事実ではない(であろう)ことを証明しようとしている。決して単に旧日本軍を美化・免罪しようとしているわけではなく、誤報が事実として受け止められることで実際に二人の命が失われたことへの激しい憤りが根底にはある。メディアの「誤報」はいかに生み出され増幅され、そして信じられてしまったのか。そのメカニズムを冷徹に読み解こうとしている。「百人斬り」が果たして可能だったのかどうかについての論証こそが最大のテーマではあるが、そこだけに目を向けるのは本書の意義を矮小化してしまう気がする。当時の軍隊の(タテマエにとどまらない)実際のあり方、日本人の思考のあり方を、様々な点から描き出しているからだ。結局のところそれは、旧日本軍がいかなる行動を取ってきたのか、それを現代の我々がどう判断すべきなのかについて考える材料を提示してくれていると思う。また、著者自身の軍隊経験(著者はフィリピンに展開した砲兵隊に所属しており、部隊壊滅後はジャングル逃避行も経験している)が大変興味深い。ここで、私が興味を持ったエピソードを紹介する(以下引用も含め少々長くなるが)。

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積ん読 その3 [読書不可侵条約系]

森本忠夫『マクロ経営学から見た太平洋戦争』(2005)PHP研究所

マクロ経営学から見た太平洋戦争

マクロ経営学から見た太平洋戦争

  • 作者: 森本 忠夫
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2005/08
  • メディア: 新書

本書は『魔性の歴史』(1975)を新書版にしたものであり、特に目新しい発見が付け加わっているわけではないようだ。しかし日本の起こした一連の戦争がいかに非合理的なものであったか、予算配分や資源の輸送など日米の経済データ等を用いてきちんと説明されており、多くの戦争関係書にこうした側面が希薄な中で、なお存在価値を失っていない本だと思われる。本書が指摘する重要な点として、例えば、中国戦線の重荷、兵站・防御の軽視、戦争による経済疲弊などがある。

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積ん読 その2 [読書不可侵条約系]

西尾幹二・八木秀次『新・国民の油断 「ジェンダーフリー」「過激な性教育」が日本を亡ぼす 』(2005)PHP研究所

新・国民の油断 「ジェンダーフリー」「過激な性教育」が日本を亡ぼす

新・国民の油断 「ジェンダーフリー」「過激な性教育」が日本を亡ぼす

  • 作者: 西尾 幹二, 八木 秀次
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2005/01/12
  • メディア: 単行本

冷戦崩壊によってマルクス主義は大幅に退却したにも関わらず、装いを変えて権力に忍び寄り、ついには「正統思想」となってしまっている。そしてそれを許したのが保守そして国民の油断であった、というのが本書のテーマ。
ジェンダーフリーの旗振り役となっている上野千鶴子や大沢真理を変態呼ばわりしクソミソに叩いて溜飲を下げようとしてます。

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積ん読 その1 [読書不可侵条約系]

吉田裕『日本人の戦争観 戦後史のなかの変容』(2005)岩波現代文庫

日本人の戦争観―戦後史のなかの変容

日本人の戦争観―戦後史のなかの変容

  • 作者: 吉田 裕
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/02
  • メディア: 文庫


この本は95年に刊行され、今回文庫化されたものである。
戦後の日本において、アジア太平洋戦争や戦争責任がどうとらえられてきたか、その変遷を検証している。あとがきでも述べられているが、著者は「軍オタ」であり、戦記モノの分析が鮮やかだと思う。著者によれば、戦後多数出版された戦記モノを時系列的に分析すると、エリート将校、下級将校らの著作を経て「最大公約数的な戦争観」が形作られ、「大東亜戦争肯定論」が登場し、「海軍史観」「宮中グループ史観」がそれに続いた。海軍、天皇および重臣グループが、軍部とくに陸軍主導による戦争に抵抗・消極的だったという後二者の「史観」登場によって、「肯定論」が結果的におしやられる結果となったことが示されている。

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