積ん読 その1 [読書不可侵条約系]
吉田裕『日本人の戦争観 戦後史のなかの変容』(2005)岩波現代文庫
この本は95年に刊行され、今回文庫化されたものである。
戦後の日本において、アジア太平洋戦争や戦争責任がどうとらえられてきたか、その変遷を検証している。あとがきでも述べられているが、著者は「軍オタ」であり、戦記モノの分析が鮮やかだと思う。著者によれば、戦後多数出版された戦記モノを時系列的に分析すると、エリート将校、下級将校らの著作を経て「最大公約数的な戦争観」が形作られ、「大東亜戦争肯定論」が登場し、「海軍史観」「宮中グループ史観」がそれに続いた。海軍、天皇および重臣グループが、軍部とくに陸軍主導による戦争に抵抗・消極的だったという後二者の「史観」登場によって、「肯定論」が結果的におしやられる結果となったことが示されている。
ここで個人的な話になるが、大学時代、ある講義で「立派だと思う政治家を挙げよ」という課題が出た。その講義では終戦前後の時期を扱っていたので、当然そのころの人物から選ぶことになる。そこで私は、なんというタイトルだったか忘れたが2、3冊の本を読み、内大臣木戸幸一を取り上げた。「軍部の暴走により戦局が悪化していくなかで、平和主義的な天皇の意を汲んで、側近である木戸は人脈を駆使して終戦工作を押し進めていった。彼こそ大局的見地に基づき国家を救った立派な政治家である」これがおおまかな私の解答だった。まさしくこの本で取り上げられている「宮中グループ史観」そのものではないか。今となってはあまりに近視眼すぎたなと思う。
さて本書では、戦争責任について、50年代に成立したダブルスタンダード、すなわち「対外的にはサンフランシスコ講和条約11条で東京裁判の判決を受諾するという形で必要最小限度の戦争責任を認め」ながら、「国内においては戦争責任の問題を事実上、否定する、あるいは不問に付す」という認識がほぼ一貫して推移してきたことが示されている。
また、東京裁判についても、戦争責任や戦争犯罪の重要な部分が免責されるという日本にとって「宥和的」な側面があり、日本の保守勢力も水面下で協力して軍部(陸軍)に責任を押し付けたという意味で「日米合作」だったことが明らかであることから、単純に「裁判を押し付けた戦勝国アメリカ対それをやむなく受け入れた敗戦国日本」という図式だけではとらえられないことを示唆している。
なお、文庫化にあたって、90年代後半から最近までの状況が追加的に補われているが、やや物足りない気がする。さらに詳細な分析が待たれるところである。
急に真面目だYO!
by 瑠璃子 (2005-09-24 23:44)
たまには真面目に書いてみるんだYO!
by わらばー@見ッチェル (2005-09-25 13:14)
読んでみたいですよ、これ。
最近、すっごく興味があるんですよ。
でも、まだまだ知識不足だし
色んな角度から見てみたいんですよね。
by (2005-09-29 11:46)
読もうとしても難しそうでなかなか手が出せないことも多いですが
とりあえずは何かきっかけになるものを読んでみたらどうでしょう。って私が偉そうに言える立場ではないのですがw
by わらばー@見ッチェル (2005-10-02 00:50)