積ん読 その6 [読書不可侵条約系]
鈴木栄『特別養護老人ホーム』(2003)NHK出版
本書は高齢者福祉施設の経営者という立場から、介護の現場を物語った本である。アルツハイマーや知的障害をもつ老人を受け入れる特別養護老人ホームが物語の舞台。小難しい制度や理論の話は出てこない(ただし3章では介護保険制度への批判がでてくるが)ので、気軽に読める。介護を必要とする老人達、そして介護に苦労する職員たちの奮闘・苦闘のエピソードがいろいろあって、介護のありかたについて考えさせてくれる。セクハラじいさん、「支店長」じいさん、遺産目当ての縁者とのやり取りなど、おもしろい。また、褥瘡をどう防ぐか、体力のある老人の排尿便をどう誘導するか、といった介護の現場の視点は、参考になる。
「老人施設職員の毎日の主な仕事は、食事と排泄と入浴の介助といっていいくらいである。・・・なかでも排泄介助の仕事が一番多いのだが、いくら仕事だからといっても、慣れればよいといっても、おむつを広げた時のあの「ぷーん」とくる臭気には、とても堪えられるものではない。・・・だからこそ、心ある者がこの仕事をすべきであり、心ある者が施設を管理しなければいけないのである。施設における排泄介助の仕事は、愛情と忍耐と会話と情熱がなければ、成り立たない」
という言葉に、福祉に情熱を傾ける著者の熱い思いが伝わってくる。
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