SSブログ

『TOKKO--特攻--』 [映画・DVD系]

TOKKO--特攻--公式サイト
http://www.cqn.co.jp/tokko/

 この映画は、日本人にとってはいまいち焦点のはっきりしない映画のように思われるのではないだろうか。というのも、この日系2世の女性監督の視点と、われわれ日本人の視点には当然のごとく、大きな違いがあるだろうからだ。日本人にとっては、すでに様々な書物や映画などで特攻が取り上げられており、いまさら特攻と自爆テロの違いを考えようという視点を持つことはできないから、この監督と同じ目線に立つことはできない。

 しかしこの映画が話題になるということは、海外では(特にアメリカ人の間では)特攻を自爆テロと同一視する見方も強いことを示している。この監督自身もそう思い込んでいたわけだ。しかし、やさしい笑顔の叔父が特攻隊出身であったことを知ってから、「特攻」とは何かを自ら確かめるため日本へと向かう。そして、特攻隊生き残りの方々を取材する中で、徐々に「ひとりの人間」としての特攻の当事者たちに向き合うことになる。

 映画全体の印象として、特攻隊員や米駆逐艦の生き残りの方々から率直な、「ひとりの人間」としての思いを引き出したインタビューは面白い。まさしく、「生きたかったよ。死にたくはなかったよ」という言葉は至言だと思う。とはいえ、(監督の視点から派生する問題でもあるが)やや突っ込み不足の感は否めない。特攻によって沈没した駆逐艦の生き残りの米軍人には、特攻に対するイメージや思いをもっと語って欲しかったし、そもそも、彼ら(アメリカ人)にとっての特攻がいかに自爆テロと同じようなものにうつっていたのか、ということが冒頭ではっきりとは示されていないので、日本人にとっては元特攻隊員のホンネとしての発言も(ある意味)当たり前のように聞こえてしまうのではないかと思う。

 逆に、特攻について全く知らない人間や若い世代にとっては、過剰に美化したり忌避すべきものとしてでなく特攻を考えるひとつの素材として、あまり違和感なく入っていけるかもしれない。


nice!(1)  コメント(2)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 1

コメント 2

ken

僕のブログ記事にもいくつか過剰な反応の書き込みがありましたが、
戦争あるいは特攻に対する知識の差が、この映画に対する評価を
大きく変えているのは事実ですね。
ただ、僕が一番大切だと思うことは、先の大戦に何の興味も示さなくなった
世代に対してのアピールであり、誤った先入観を正すことであり、
何よりも「知る」ことに対して前向きにさせることだと思うのです。
by ken (2007-08-13 12:00) 

わらばー@見ッチェル

kenさん

nice&コメント、ありがとうございます。
kenさんがおっしゃるように、あの戦争に興味のない世代にとっては、その目を向けさせるひとつの素材となりうる作品ではなかったかと思います。NHKドキュメンタリーのような重厚な語り口だととっつきにくいかもしれませんが、この監督は特攻については何も知らないに等しいわけで、そんな人が特攻とは何なのかを掘り下げていく。その過程で、当初持っていた「狂信的な自爆テロ」という認識を改めていくという、ひとりの人間の先入観や認識を改める過程としても面白い作品だという気がします。
by わらばー@見ッチェル (2007-08-13 15:33) 

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。