SSブログ

『雷撃隊出動』 [映画・DVD系]

『雷撃隊出動』(1944.11)を見た。

戦争末期に海軍省後援で作られた戦意高揚映画。

空母瑞鶴を飛び上がる機があった。機は南方の陸上基地へ。そこで雷撃の神様と言われた通称「三カミ」(村上、川上、三上)が勢ぞろいする。教会で「土人」が歌を歌う一見のどかな風景。しかし戦況は思わしくなく、日に日に損害も増えていく。川上が補充機を受け取りにいったん本土に赴くが、どうやら補充は期待できない様子で、村上は憤る。敵の空襲もたびたびある中、貴重な戦闘機を他の基地へ貸し出すこととなり、搭乗員たちは泣く泣くそれを見送ることとなる。しばらくしてようやく補充の戦闘機が到着、さっそく空襲してきた敵の迎撃で大戦果を挙げ溜飲を下げる(仇をとってくれたと喜んだ「土人」の長がおみやげを持ってきて「ジャパン、ナンバーワーン!」」と叫ぶおもろいシーンがある)。そしていよいよ敵機動部隊が発見され、村上率いる母艦航空隊、三上率いる基地航空隊は全力で出撃、雷撃を行っていくのだった・・・

いくつか印象的なシーンがあった。例えば、食堂を経営している日本人のばあさんは鼻息が荒い。「アメリカの畜生どもをこの世界から追っ払っわにゃあ。わしゃここの土になってもいい。だがアメリカの畜生どもを2人でも3人でもたたっ斬ってからでないと」と言うのを聞いていた3人の兵士のほうは、逆に押し黙ってうつむいているのが印象的。すでに敗戦の日もそう遠くないことを暗示しているようにも見える。そのばあさんは、空襲を受けた後、捕虜が捕まったことを聞いて「わしに殺させておくれませ殺させておくれませ」と何度も懇願する姿もちょっとこわい。

次に、短歌得意な兵が日本を褒め称えるシーンがある。曰く「ひとくちにいって雷撃精神だ。これはつまり精神力以外の何者でもないと思うがどうだろう。わしは日本人の優秀性を考えている。歌だと古事記や万葉集などが生まれてるのは歴史上容易ならぬ時代なんだ。こういう容易ならぬ時代に日本人の真の強さ正しさ美しさがパッと出てくる。そこからああいった立派な歌が生まれる。つまり日本人の真の姿、雷撃精神だと思うがどうだろう?日本人とはすぐれた民族だが、一人一人がそれを自覚して皆その気になるつまり雷撃精神になる、すなわち一億ぜんぶが君らのような雷撃屋になったら、それこそ本当に神の国なんだ。雷撃精神とはすなわち体当たり、死ぬことなんだ」(この独白のシーンだけ妙な雅楽の音つきw)
一億総特攻・神の国発言キター

そしてもっと印象的な問答シーンがある。ある兵士が米兵捕虜に接してのち曰く「敵はこう言っている。『我々は飛行機もいい、軍艦もいい、兵器もいい、兵もいい、質もいい、新兵器もある、兵の士気も燃え上がっている、そんなアメリカが絶対負けるわけない』などと言うんだ。それなのにこっちでは、優秀な操縦士が乗る飛行機がなくて、たきぎ取りをしている。こんなバカなことがあるか!」と憤るのだが、それに対して別の兵士曰く「こっちが一人死んであいつらを十人殺せばいいんだ。それしか戦争に勝つ道はない。敵の弱点は人命を失うことさ。その弱点を一番有効につけるのが俺たち雷撃よ。こっちが命を捨てさせすればたった1発の魚雷でやっつけられるんだ。こんなボロい話はないぞ、なあ。」と答えられてコロッと納得させられている。「。俺は君のために死にに行く」などとロマンに浸っている場合ではなさそうだww

それから、敵であるアメリカは、戦闘機が病院や地元の「土人」を銃撃したり、捕虜がヘンな敬礼(礼儀を知らない存在)をしたりなど、物量だけは豊富だが卑怯で野蛮な「畜生」として描かれ、敵愾心を煽ろうとしている。

映画全体を通してかなり悲壮な感じ、すでに敗色濃厚でありいよいよ追いつめられて余裕も何もない状況がかなりあらわになっているという意味では、今から見れば戦意高揚になっているのかどうかよくわからない。というより、そもそも当時どの程度の人がこの映画を見たのかも疑問ではあるが。

登場する航空機は、九七艦攻、天山?、九七式飛行艇の離着水シーン、一式陸攻、零戦52型など(冒頭の空母瑞鶴だが、この映画公開時にはすでにレイテ沖海戦で沈没している)。米軍は(模型と思うが)P38、B24など。

雷撃隊出動

雷撃隊出動

  • 出版社/メーカー: 東宝
  • 発売日: 2006/07/28
  • メディア: DVD


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。