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『硫黄島からの手紙』 [映画・DVD系]

『硫黄島からの手紙』を見た。

大学2、3年の頃、情報誌で短期バイトを探していて、20日間ほどの皿洗いのバイトを見つけたことがある。時給1000円以上で特に難しい用件もなさそうだったので応募しようかと思ったのだが、一つ大きな問題があって、それは場所がなんと硫黄島ということだった。硫黄島の自衛隊施設(食堂)での皿洗いで、硫黄島への往復は自衛隊の輸送機でということであった。希望していた短期バイトだし、普通なら乗れない自衛隊機で、しかもこの機会を逃したら行けそうにもない硫黄島に行けるということで応募寸前だったが、結局別のバイトを見つけてそちらに決めてしまったので、硫黄島には行かなかった。今考えれば、行っておけば良かったと思う。

さて、本作はイーストウッド監督による硫黄島2部作の2作目。

冒頭、現在の硫黄島で壕内の遺骨収集作業が行われている。そのシャベルで掘る映像が、当時の陣地を掘っている主人公西郷(二宮和也)の映像につながっていくかたちで映画は始まる。

以下、ネタバレ含む

戦争の命運を握る硫黄島に新たに赴任してきたのは、渡辺謙ふんする栗林中将。赴任早々、持久戦を行うためにこれまでの現地部隊の方針を全て変えていく。将校達の反発も生むが、栗林は持久戦によって1日でも敵の攻撃が本土に及ばないよう断固として準備を進めていく。島には、戦車連隊を率いるバロン西(井原剛志)、典型的な軍人タイプの海軍伊藤中尉(中村獅童)がいた。陣地構築が進められるさなか、空襲が始まり、いよいよ米軍上陸の時が訪れる・・・。

1作目『父親たちの星条旗』とも相通ずるが、大義を掲げた戦争というものが個人にいかなる運命を及ぼしたのかを描いている。最も悲劇的なのは、アメリカに留学しアメリカを知っていた栗林自らがアメリカに対して刃を向けなければならなかったことだろう。これは留学時の回想とラストのシーンにもつながる。「友好の象徴」であったはずのピストル。「国の大義と個人としての内なる命令は同じことだ、しかしあなたを殺しませんよ」と、彼は話していたはずだが。栗林は「最も米軍に被害を与えた硫黄島戦の指揮官」として日米双方に知られているが、彼個人は子煩悩なひとりのお父さんであり、戦争によって自らの信念を大義に殉じさせる矛盾に苦しんだひとりでもあった、ということなのだろう。

 家族を守るため死ぬ覚悟で来たのに、家族を思うと生きたいと望む、ひととしてのあり方に気づく栗林。「どうせ死ぬんだ」と絶望的だった主人公、「生きたい」と思い投降するが射殺される清水、敵戦車と刺し違える覚悟だったが捕虜となる伊藤中尉、同じ人間としての敵を知りながら戦い死ぬ栗林とバロン西。なにが彼らの運命を分けていったのか。

 1作目と(直接ではないが)内容的にリンクするシーン。「敵の衛生兵を狙え」と訓示される場面。主人公らの守備隊が手榴弾で各自自決する場面。壕内に連れ込まれた米兵がリンチされる場面など。

そのほか、印象に残ったのは、主人公に召集令状が渡されるシーン。町内会&愛国婦人会のおばさんの目が非常にリアルでこわいw 
 それから、憲兵による犬射殺シーン(直接殺す場面はでませんので念のため)。いくらなんでも犬を射殺、ってのはあり得ないような気もしますが。あそこは単に、部下の清水が非国民を制裁することができなかった(だから弱腰で命令違反で硫黄島へ飛ばされた)としておくだけで良かったのではないだろうか。そして、栗林の手紙シーン。子供への呼びかけだけであって、子供の映像は一切出てこない。手紙はもちろん感動的なのだが、ここはもうちょっと栗林の家族も踏み込んで描いて欲しかった気がする。だが、逆にあまりセンチメンタルに流されなかった点がこの映画を引き締まったものにしている感じもするがどうだろう。さらに、中村獅童、厳格な軍人を演じているんだが、どうしてもお笑いキャラに思えてしまうのはなぜ?やはり獅童だからだろうなあw

最後に、冒頭の迷彩塗装の一式貨物輸送機にはシビれますた(なお、実際に使われているのはビーチクラフトC45らしい)。これを知っただけでもけっこう満足かもしれないwそんな輸送機があったとは知らなかったので、予告編でちらっと出てきた時には九六陸攻かと思ってましたwそれから初めて日本軍の噴進砲(ロケット弾)も出てきたり、九五式軽戦車も出てきていたのでまあ良かったと思います。例によってチハでなかったのが残念。蛇足だが、軍事的な考察からいえばかなり突っ込みどころがあるらしい(噴進砲の位置とか兵士の軍装とか)。

なお、原作的意味合いを持つ『「玉砕総指揮官」の絵手紙』と、『散るぞ悲しき』は必読。


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瑠璃子

ミリオタはイーストウッドのミリオンダラーベイビーでもみてなさいw
by 瑠璃子 (2006-12-27 09:34) 

わらばー@見ッチェル

イーストウッドの他の作品って見たことないっす
by わらばー@見ッチェル (2006-12-28 00:59) 

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